CBREは7月29日、「ロジスティクスマーケットビュー 2016年第2四半期」を発表し、首都圏の大型物流施設の空室率は、年末までに低下の見込みと発表した。
物流施設市場においては堅調な需要が続いている。eコマースの拡大や人材難など、市場の構造変化が背景にあるため。今期も首都圏で空室率は上昇したが、高水準の供給が続いていることと、それらの多くが比較的新興のエリアに立地していることによる。
新規供給が高水準だった一方で、首都圏では新規需要も今期は過去最高を更新した。近畿圏を初めとする地方都市でも、既存物件の希少性を背景に、未竣工の物件に対する引き合いが多い。首都圏の空室率も、年末までに低下に転じると予想している。
首都圏では、今期(Q2)の大型マルチテナント型物流施設(LMT)マーケットでは7棟、13万5000坪の新規供給があった。これは、2015年Q4に次ぐ規模である。3四半期続く10万坪以上の大量供給の影響で空室率は8.9%と前期から0.6ポイント上昇したものの、首都圏の需要は力強く、7棟のうち4棟は満室での竣工となった。
そのうち「守谷ロジスティクスセンター」と「ロジスクエア久喜」については、一棟借りが発表された。リーシングで今期明らかになった事例では、アパレル業界からは通販のロコンドならびに靴メーカーのスケッチャーズ、そして総合スーパーのイオングローバルSCMなど、それぞれ1万坪クラスの大型テナントとして入居を決定した。
これらの需要が積み上がり、今期の新規需要は11万坪と、四半期ベースで過去最高を記録した。
首都圏4エリアを比較すると、外環道エリアでは竣工物件の空室が残り、空室率は7.4%に上昇。国道16号エリアは7.8%に下がり、安定感を示した。圏央道エリアは19.7%と前期からさらに上昇した。
来期の新規供給は9万3000坪、その後は2017年Q2まで各期5万坪以下の新規供給に留まる。過去2年間の平均新規需要が6万5000坪(四半期ベース)であることに鑑みると、空室率は年末までに低下に転じると見込んでいる。
ただし、デベロッパーの開発意欲は依然として旺盛。好調なリーシングの進捗をみた「グッドマンビジネスパーク」(千葉県印西市)ではステージ2の開発が、茨城県では「GLP五霞」、「DPL阿見霞ヶ浦」の開発がそれぞれ発表された。特に茨城県南部の2案件は、同エリアが圏央道の延伸により競争力のある立地としてデベロッパーに認識されつつあることを示している。
近畿圏では、今期(Q2)は、「DプロジェクトSC西淀川 III」が満室稼働で竣工した。大塚商会はこの施設での「西日本物流センター」開設を発表した。点在していた保管倉庫を集約拡充すると共に、同社が運営するオフィス用品等の通販事業(「たのめーる」)の関西圏における拠点として利用する。
そのほか、IT機器関連商材の西日本エリアのハブ機能も持たせるとしている。また、既存物件でもeコマース関連の需要により1500坪~4000坪の空室が複数消化された。この結果、空室率は前期の3.4%から1.9%まで低下した。
それに加えて、通販大手のアスクルは1年半以上先に竣工する「GLP吹田」を一棟借りし、「ASKUL Logi PARK 関西」を開設すると発表した。これは、延床面積16万5000㎡(約5万坪)のアスクル国内最大の物流センターとなる予定である。このように、近畿圏ではeコマース企業による物流投資が増加している。
中部圏では、マルチテナント型の大型物件が相次いで竣工するのは来年以降だが、複数の物件で早くもテナントが内定し始めている。日本ロジスティクスファンド投資法人が底地を保有する「春日井物流センター」では、現在建設が進んでいる建物が2017年5月に竣工する予定であり、入居テナントには既に摂津倉庫が決定している。
このように竣工前の早い段階からリーシングが進展したことは過去になく、大型の物流施設への需要の強さは予想以上である。それを反映して、これら大型物件の成約賃料目線は一段と上昇している。物流集積度の高い愛知県小牧市に開発される「GLP小牧 II」は、需要をさらに喚起することになるだろう。
福岡圏では、2015年1月竣工の「プロロジスパーク久山」では、竣工時から入居している3PL企業が増床し、一棟すべてを賃借することになった。1000坪以上の空室はQ2時点では数えるほどしかなく、テナントの移転先候補としてQ4以降竣工予定の大型開発物件が視野に入ってきた。
また、九州自動車道の要衝、鳥栖エリアでは「ロジスクエア鳥栖」(2017年12月竣工予定)の開発が決まった。
なお、熊本地震の影響としては、支援・復旧物資の保管などの短期的な需要はあったものの、現在は通常どおりのニーズに戻っている。
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