パナマ運河/拡張と今後

2016年07月15日 

パナマ運河の拡張と今後

木村 徹
物流・貿易研究所
代表 木村 徹

1914年に竣工したパナマ運河はパナマのほぼ中央に位置し、太平洋とカリブ海(大西洋)を結んでいます。

1903年11月18日に米国は、運河の建設権、管理権、運河の両岸5マイルの運河地帯の永久租借権に関する条約をパナマ政府と締結してパナマ運河を完成させました。完成後は米軍が運河地帯に駐留し米国の統治下で管理されてきました。

その後、クーデターや米軍の軍事侵攻などを経て、1999年12月に運河と周辺地域はパナマ共和国に完全に返還されたのです。

パナマ運河
※パナマ運河庁 http://www.pancanal.com/eng

■パナマ運河の拡張工事

パナマ政府はパナマ運河の拡張を2006年に計画し、2007年9月に工事を開始しました。当初100周年にあたる2014年の竣工を目指していましたが、工事の遅れがあり2016年6月26日に竣工しました。

拡張に要する総事業費は52億5,000万米ドルであり、日本からも国際協力銀行が、三菱東京UFJ銀行及び三井住友銀行を共同幹事行とする民間金融機関とともに8億米ドルの協調融資をしています。

工事では、2基の閘門設備建設、既存航路の拡張と浚渫等が実施され、運河のキャパシティは約80%増加しました。

運河を拡張した理由は、船舶が大型化していることと、航行する船舶が増加し運河が輻輳していることが挙げられます。順調に航行すれば全長80Kmのパナマ運河は約8時間で通過できるのですが、拡張工事前は混雑のために平均的な通過時間が26時間にもなっていました。

時期によっては50時間以上かかることもありましたし、閘門を通過するまでに投錨して4日間も待つことさえあったのです。この時間を短縮するのが今回の拡張工事の目的の一つでした。

この拡張工事によって、航行する船舶の需要がパナマックス船型からポスト・パナマックス船型を含む他船型へシフトしていく可能性があるので、造船業にも良い影響を及ぼしています。

パナマ運河
※パナマ運河庁 http://www.pancanal.com/eng

■パナマ運河を通航できる船舶

パナマ運河は、南の太平洋側「パナマ」から北のカリブ海側「コロン」まで人造湖の「ガトゥン湖」を隔てて結ばれており、その全長は約80Kmにも及びます。南端と北端では海抜が違うために直接太平洋とカリブ海を結ぶことができないので、3段階の閘門を設けることで水位を上下させて船舶を通航させています。

拡張工事前のパナマ運河を通航することができた最大の船舶サイズは長さが294.1m、幅が32.3m、喫水が12.04mのパナマックスと呼ばれる5,000TEU規模のコンテナ船でしたが、拡張後の現在は、長さが366m、幅が49m、喫水が15.2mのポスト・パナマックスと呼ばれる14,000TEU規模のコンテナ船が航行できるようになりました。

これは、以前の2.7倍のコンテナ数ですから、船会社は今まで3隻必要だったところが1隻で済むようになり、運航コストを削減することができます。

また、コンテナ船の横幅で考えると、今までは横13列までコンテナを積載することができる船舶が最大のサイズでしたが、拡張後はコンテナを横19列まで置くことができる船舶が通航できるようになりました。

パナマ運河
※パナマ運河庁 http://www.pancanal.com/eng

■パナマ運河通航料
パナマ運河の通航料は船舶の形状や積み荷によって違います。その形状は、フル・コンテナ船、その他のコンテナ船、客船、タンカー、自動車専用船等に区分けされています。

コンテナ船の場合はTEU単位で通行料が決められており、2007年にはTEUあたり54米ドルでしたが、2011年には82米ドルに上昇しています。そして2016年4月からは、年間航行数によって変動しますが概ねTEUあたり90米ドルに変更されました。

日本船主協会の資料にある2014年度の邦船についてのパナマ運河通航実態調査によると、コンテナ船の年間航行隻数は291隻、延べコンテナ数は1301千TEUであり、その通航料の合計は118,343千米ドルだったということです。

ここから計算すると、コンテナ船一隻当たりの平均通航料は407千米ドルになります。

パナマ運河

パナマ運河
※パナマ運河庁 http://www.pancanal.com/eng

運河通航料は上昇していますが、船社は運行する船舶数を削減することができるため、運行費用を20%削減できると言われています。

日本の海運会社は北米航路に大型コンテナ船を順次投入すると表明していますので海上運賃低下の可能性は高いでしょう。

また、日本は2017年に米国東海岸からシェールガスを輸入する予定になっています。

シェールガスを積載するLNG(液化天然ガス)タンカーは横幅が32mを超えるため、輸入するためにはパナマ運河の拡張工事が重要な要素でした。

シェールガスの輸入計画が決定する前には原油価格が1バレルあたり100米ドルを超えていたため、シェールガスはその他の燃料と比べて割安と言われていました。

しかし、現在では原油価格が50米ドルほどまで下がっておりシェールガスの割安感が薄れていることから、今後のLNG船の動静も気になるところです。

■物流・貿易研究所
物流・貿易研究所は、物流のコンサルタントと改善。貿易、国際物流、関税問題やFTA・TPPに関するコンサルタントを行っている団体です。

最新ニュース