日本政策投資銀行は今月のトピックスとして「拡大するアジアの低温/定温物流~タイ・中国における冷凍冷蔵倉庫事業の現状と展望~」のレポートを公表している。
それによると、低温/定温物流事業の一翼を担う冷凍冷蔵倉庫に保管される物資の大半は、農畜産物、水産物、冷凍食品などの食糧となっており、食糧保管需要の増加が冷凍冷蔵倉庫事業の拡大に直結する。
世界の食糧貿易が、2005年から2013年にかけて年率9.9%で拡大する中、特にアジアでの輸入需要が大きく拡大。輸入国の港湾地区などでの冷凍冷蔵倉庫の需要も高まっているとしている。
冷凍冷蔵食品の高まりは、タイ・中国の国民1人当たりの冷凍冷蔵食品の市場規模が、日本や欧米諸国の2~3割以下の水準にとどまっており、近年、年率6~11%程度で大きく拡大していることによる。
背景には、所得水準の向上に加えて、近代的な食糧雑貨店や外食店が急速に台頭していることがある。
タイでの日系の冷凍冷蔵倉庫事業は1990年前後から進出しており、タイの冷凍冷蔵倉庫業者売上高ランキングで、首位の横浜冷凍をはじめとして上位10社のうち、3社を日系企業が占めている。さらに、日系企業6社合計収容能力が全体の約2割を占めるなど、大きな存在感を示している。
最近は、タイ国内でのコールドチェーン需要の高まりを背景に、タイ国内で展開する小売企業(日系含む)向けのビジネスなどが加速しており、積極的な事業拡大が続いている。複数の企業で事業のさらなる拡張が計画されており、日系企業の存在感は今後一層大きくなるものと見られている。
課題として、タイ資本による、日系企業と同等かそれ以上の保管能力を持つ営業倉庫の展開や、倉庫保管料や入出庫料が低く抑えられているという。
こうした状況から、付加価値と差別化戦略が必要とする。今後は、保管型倉庫から加工型・流通型倉庫への需要シフトが予想されていることから、こうした面で差別化・付加価値化による収益性の向上を実現できるかどうかが課題だとしている。
レポートでは、その後中国の冷凍冷蔵倉庫事業についても、同様に現状・課題・展望の順にまとめている。