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DHLサプライチェーン/ギャビン・マードック社長、トップインタビュー

2015年02月24日/物流最前線

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革新的な技術とソリューションで顧客の要望に応える

<ギャビン・マードック DHLサプライチェーン代表取締役社長>
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世界有数のロジスティクスプロバイダーであるドイツポストDHLの一部門であるDHLサプライチェーン。その日本法人のトップに就任したギャビン・マードック社長は「私に与えられた課題はサプライチェーン部門で日本国内ベスト10企業になることだ」と語る。多くの企業がアウトソースしたくなるような革新的技術と最適なソリューションを武器に、日本市場での拡大戦略を描く。

日本での競争は厳しいが、成長の機会も大きいマーケット

―― 現在の日本の経済状況をどう捉えているか。
マードック 依然として厳しい状況が続いていると思います。政府も給与アップの要請やさまざまな景気刺激策を打っていますが、結果はこれからでしょう。今後見守っていきたいのは、製造業がどれくらい海外、特に中国から国内に戻ってくるかです。これによって日本の景気もかなり左右されると思います。

―― 製造業の国内回帰ですね。
マードック やはり、国内市場の活性化には国内製造業の復活が最も大切です。国内製造業が復活すれば、雇用も生まれ、消費需要も上向くものと考えます。今は円安だけに、日本で製造して輸出するメーカーには有利なはずです。以前よりは効果は少ないですが、輸出が膨らむと、国内消費も膨らむという循環は日本国内の景気浮揚には大きなメリットになるはずです。日本の景気次第で私たちの成長度合いもある程度決まってきます。

―― 日本の物流市場については。
マードック 日本の物流市場はまだ非常に細分化されています。大企業だけでなく、中小企業も含めれば相当な数になります。日系企業だけでなく、私たちのような外資系企業も多数参入しています。それだけ競争は厳しく、やりがいのある市場だと感じています。

―― 競争が激しいと。
マードック そうです。この競争に勝たないと、先は描けません。そして、このところ、景気の動向とは別に、多くの企業が物流のアウトソースを進めていることも事実です。その意味では私たちの成長の機会も大きいものと思います。私たちはいかにして、この要望に応えていくのか。顧客がアウトソースしたくなるようなサービスや最適なソリューションをいかにして提供できるのか、ここに全力で応えていかなければならないと思っています。

社長としての課題は国内でベスト10の売上高

―― 日本経済のターニングポイントとも言えるこの時期に社長就任です。
マードック 社長就任は2015年1月1日付でした。私が社長として与えられた最大の課題はDHLサプライチェーンの日本国内でのシェアアップです。3PL企業として、売上高国内シェアトップ10を目指しています。

―― トップ10に入っているのでは。
マードック いやまだです。ご存知のように、DHLはサプライチェーン、エクスプレス、フォワーディングの3部門がありますが、これら3部門を合わせれば、当然上位にいます。しかし、サプライチェーン単独ですと、トップ10にはまだ届きません。

―― トップ10に入るための戦略とは。
マードック 元来、外資系の企業には強くブランド力も抜群で、顧客も非常に多いのですが、国内企業との関わりはまだまだです。日本国内の市場で本当に成功するためには、国内企業との取引をもっともっと増やすことに尽きます。

―― 富士通やコニカミノルタ等の日系大企業との関わりがありますが、それでも外資系の企業の方が多いのですか。
マードック 富士通社の物流部門は買収、コニカミノルタ社の物流部門は事業継承の上、LLP(リード・ロジスティクス・プロバイダー)で運営・管理しています。最大の顧客は日系企業ですが、全体ではまだまだ外資系の企業の方が多いですね。今後ケーススタディとして、これら国内企業との取り組みなども適切な機会にアピールしていかなければと思っています。

―― 国内企業のケーススタディ公表は。
マードック 公表できるようにしていきたいと思っています。富士通社もコニカミノルタ社も当初両社で合意した数字目標は達成しているということです。

<添付文書を医薬品に添付する>
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<医薬品にラベルを貼付する>
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治験薬に特化したライフサイエンス分野を強化

―― それでは具体的な国内企業対応の戦略を。
マードック DHLサプライチェーンでは4つの事業分野に注力して展開しています。テクノロジー系、コンシューマー&リテール(一般消費財・小売)系、ライフサイエンス&ヘルスケア系、自動車の4つです。このうち、テクノロジー分野とコンシューマー&リテール分野系は従来から強く、順調に伸びています。そこで、中・長期的に期待したいのがライフサイエンス&ヘルスケア分野と自動車分野です。ライフサイエンス&ヘルスケア分野では、治験薬(厚生労働省の製造販売承認を取得前の、治療効果を調べている臨床試験段階の薬剤)や医薬品・医療機器にも対応しています。

―― 治験薬のサプライチェーンとは。
マードック DHLサプライチェーンの治験薬ロジスティクスサービスは、治験薬ロジスティクスのスペシャリストを揃え、万全の体制で顧客の治験薬ビジネスをサポートできるからです。治験薬の出荷は単なる出荷ではなく、それを必要とされているエンドユーザーの方の命に関わる商品を扱っているという認識をもって対応しています。これには高い精度を保ったオペレーションを提供することが必要で、DHLサプライチェーンでは可能です。

―― この事業を拡大するには。
マードック 通常の営業のほかに、今後はM&Aやジョイントベンチャーなども視野に入れて取り組んでいきたいと思います。革新性のある技術でコスト削減などに応えていきたいですね。私たちのリソースとネットワークを使えば、他社の荷物も合わせて共同配送することで、大きな相乗効果を生むことができます。

―― 勝算は。
マードック 医薬品メーカーもパテント切れなどでジェネリック医薬品に移行したり、グローバル化しつつあり、医薬品メーカーも変化しています。私たちの治験薬ロジスティクスはグローバルで展開していますので、その実績も豊富です。システムもOrder-To-Cashを持ち、オーダーから支払いまで対応しています。革新的な技術、管理能力、システム、輸送を組み合わせて最適なサービス提供、コスト削減が可能です。チャンスだと思っています。

<オランダでリコー社とスマートグラスとAR(拡張現実)の活用試験を実施>
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<延床面積4.4万m2の相模原ロジスティクスセンター>
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革新的な技術は日本でも展開する

―― 革新的な技術といえば、グーグルグラスは興味深いです。実用性は。
マードック まだ、試験的に導入しただけですが、現在は検討中ということで、結果が出た段階で何らかのアクションを起こすつもりです。結果が良ければ、顧客の利益につながるので、当然採用するでしょう。日本でも、いくつかの場所で実際に導入して試験的にやってみたいと思います。ただ、グーグルグラスだけではなく、別のベンダーさんの機器・システムでも良いと思っています。顧客の要望に応えられる革新的な技術なら日本でも積極的に展開していきます。

―― BTS型の物流施設を2014年4月に開設しています。今後の開発は。
マードック 相模原ロジスティクスセンターですね。今のところ新規開発は考えていません。顧客の要望にもよりますが、今後はディベロッパーの建設した物流施設のスペースを使うことを予定しています。新規の先進的な大型倉庫の建設が目立ちますが、古い倉庫もリノベーションで生まれ変わっているケースもあります。新しく大きければ必ずしもいいわけではなく、顧客の要望にいかに応えられるかが問われるべきです。古い倉庫でも十分という顧客もありますからね。

―― 物流業界は人手不足が深刻です。
マードック 人手不足は懸念材料です。賃金が上昇すればコストアップの大きな要因になります。ただ、現在の状況はお金だけではないですね。私たちができることは少ないですが、物流という仕事のやりがいや重要性、楽しさを伝えていかなければなりません。業界全体で取り組まなければならない課題です。

―― 読者に向けてのメッセージを。
マードック 私たちはいつでも新規ビジネス開発に門戸を開いています。物流関係で悩み事や見直しを考えているのであればぜひ弊社担当者にご相談ください。きっとより良いソリューションやサービスを提案できるものと信じています。また、スキルアップしたい、キャリアアップしたいマネージャーの方々、外資系企業で働きたい方々もお待ちしています。現在、空いているポジションがなくとも、ビジネスを拡大していけば必然的に希望のポジションは増えていきます。企業の成功の鍵は何と言っても人だと考えています。

―― マードック社長の趣味は。
マードック スキーです。毎年冬が楽しみだったのですが、今年は社長就任でまだ1度も行っていません。故郷の北アイルランドは雪があまり降らず、スキー場もありません。ですから、11歳ころから、フランス、スイス、オーストリア、イタリア、ブルガリア、トルコなどに行ってスキーを楽しんでいました。日本では、北海道や長野県の白馬、湯沢温泉ナスパで滑ったことがあります。ようやく、この4月に北海道の予約が取れたので楽しんでくるつもりです。

<日常の健康法はジョギングというギャビン・マードック社長>
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ギャビン・マードック
DHLサプライチェーン代表取締役社長

プロフィール
生年月日:1967年12月18日
生まれ:北アイルランド(英国籍)
学歴:クランスフィールド大学(物流修士号)
   アルスター大学(輸送技術学士)
1996年にエクセルロジスティクス(DHLサプライチェーンの前身)にディベロップメントマネージャーとして入社。以来19年にわたり、英国、アイルランド、トルコ、日本など世界各地でオペレーションを経験。直近5年間はDHLサプライチェーンの全額出資会社トレードチームの社長として、飲料業界向けに英国全土へ配送サービスを提供可能な飲料専門のネットワーク構築に取り組んできた。

■DHLサプライチェーン
http://www.dhl.co.jp/ja/logistics/supply_chain_solutions.html

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