ヤマト運輸は1月22日、クロネコメール便のサービスを3月31日受け付けで廃止すると発表した。
廃止の理由は「信書」の定義に伴うもので、「信書」の定義が顧客に分かりにくいにも関わらず、信書をメール便で送ると、荷物を預かった運送事業者だけでなく、送った顧客までもが罰せられることが法律に定められているため、信書に関して法違反の認識がない顧客が容疑者になるリスクをこれ以上放置できないとして、廃止を決めた。
企業姿勢と社会的責任に反するものであり、このままの状況では、顧客にとっての「安全で安心なサービスの利用環境」と「利便性」をヤマト運輸の努力だけで持続的に両立することは困難であると判断した。
クロネコメール便の2013年度取扱数は20億8220万冊、売上高1200億円で、代替サービスについては、法人の顧客には、事前に内容物の種類を確認できるカタログ、パンフレットなどの「非信書」に限定し、運賃体系も見直した上で、2015年4月1日から「クロネコDM便」と名称を変更し、サービスを継続する。
さらに、「小さな荷物」のやりとりにクロネコメール便を利用している個人、法人の顧客向けには、同じく4月1日から、「小さな荷物」を安心で手軽に利用できる宅急便のサービスを拡充する。
「クロネコDM便」のサービス内容については今後案内する。
なお、クロネコメール便に従事する業務委託者(クロネコメイト)は引き続き「クロネコDM便」に従事するため、今回のクロネコメール便の廃止に伴う契約解除等の予定はない。
信書については、総務省が2003年に「信書に該当する文書に関する指針」が告示したが、2014年3月時点でこの指針を認知している人は、同社実施のアンケートで全体の23%にとどまっている。
さらに、同一文書でありながら輸送の段階で「信書」の場合と「非信書」の場合があるなど、「信書」の定義は極めて曖昧であり、特に個人向けの書類については、総務省の窓口に問い合わせても「信書か否か」即答できないケースが多発している。
2009年7月以降、クロネコメール便を利用して顧客が信書にあたる文書を送り、郵便法違反容疑で書類送検、もしくは警察から事情聴取されたケースは計8件にのぼった。
こうした事態を重く受け止め、顧客がクロネコメール便で信書に該当する文書を送り、罰せられてしまうことがないよう、荷受けを厳格化し、注意喚起をはかるとともに、2013年12月に、総務省情報通信審議会 郵政政策部会において、内容物ではなく、誰もが見た目で判断できる「『外形基準』の導入による信書規制の改革」を提案し、信書を送ってしまっても、送った顧客ではなく受け付けた運送事業者のみが罪に問われる基準にすべきであると訴えてきた。
しかし、この主張は受け入れられず、依然顧客のリスクを防ぐことができない状態となっていた。
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