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PTC/エニグマ買収でSLM分野を強化・拡充

2013年11月26日/生産

PTCが7月16日にエニグマを買収して4か月が経過した。

SLM(サービスライフサイクル管理)で拡充を目指していた同社だけに、エニグマ(PTC Servigistics InService solutions に改名)の持つ技術情報サービス分野のノウハウは、SLMの大きな拡充を意味する。

来日したPTCのエニグマ責任者アッシャー・ガッバイ バイスプレジデントに日本での取り組みを聞いた。

<アッシャー・ガッバイ バイスプレジデント>
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両社に効果的な企業買収

PTCは日本では3次元CADなどのCADシステムで有名だ。

しかし、近年はPLM(製品ライフサイクル管理)、ALM(アプリケーションライフサイクル管理)、SCM(サプライチェーンマネジメント)、SLM(サービスライフサイクル管理)分野での取り組みが活発で、企業の製品の開発とアフターサービスのソリューションを提供する会社となっている。

そのPTCが2013年7月16日にエニグマを買収した。

エニグマは約21年の実績を積み重ねてきた技術情報サービスのエキスパート集団で、PTCのSLM分野の強化が明白になった。

PTCのエニグマ責任者アッシャー・ガッバイ(Asher Gabbay)バイスプレジデントは買収の理由を「PTCにとっては、SLM分野の中に技術情報サービス部門が加わることで企業価値の向上に、エニグマには対象顧客企業の拡大機会が広がるメリットがありました」と、相互にメリットのある企業買収だったと語る。

実際、エニグマの顧客には、航空機や建設機械などの重工業系の企業が多く、流通系や小売系の企業が少なかった。

PTCには豊富な顧客がいるため、PTCと一つになったことで、数多くの企業と関係構築ができることになった。

<図解 まんが・はやわかりSLM>
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顧客への即納と在庫減少をどう実現するか

SLMはサービスライフサイクル管理と訳されているが、さまざまな分野に関連してくる。図1のように、企画・設計・製造、計画、実行、そして管理・分析と総合的な流れをつかんだ上での取り組みが必要だ。

補修部品の補充などは倉庫と輸配送関係のロジスティクスにも大きく関わってくる。複雑なリバースロジスティクスが発生するサービス物流管理も必要となる。

この内、エニグマが得意としていたのが、技術情報サービス。製造業には、製品を発売する前に、サービスセンターやリペアセンター、販売店などで使用する補修部品の在庫管理や在庫計画、サービスマニュアル、パーツカタログなどを用意しておかなければならない。

しかし、新製品登場直後は完璧にできていたとしても、数年経つと、設計変更などが頻繁に行われるために、陳腐化してしまう。

現場で対応する技術者が素早く変更を確認できれば良いが、さまざまな商品を製作している工場から現場への連絡はシステム化されていないと滞りがちになる。これを完璧にするには、多大な費用がかかる。

一方、商品を購入した顧客は、機器が故障した場合、即修理を求める。設計変更が現場に届いていない場合や修理部品が直ぐに調達できず現場の技術者が対応できない場合、サービスセンターやリペアセンターなどの拠点に持ち込むことになり、商品は長期のリタイアとなり、顧客の同意は得にくくなる。

進んでいない日本の技術情報管理

コンシューマー製品だと、ユーザーの初期段階の確認忘れも多い。修理が必要とコールセンターとの会話で結論付けられても、いざサービスセンターに届くと、電源が外れていただけなどの故障ではない場合が多いという。

企業にとっては、修理に訪問することや、製品の移動はコスト増の大きな要因となり、なるべく避けたい業務の一つだ。

ある大手家電メーカーの例だと、故障でなくても、修理を要望してくる割合が44%もあったという。適切な対応マニュアル、技術情報マニュアルなどの完備のうえで、ナレッジマネージメントが求められる。

また、拠点に補修部品の豊富な在庫があればいいが、いつ必要になるかもわからない部品を大量に在庫することはコストアップの大きな要因となる。

在庫に関しては、製造企業が補修部品やサービス部品を別法人の会社のサービスセンターなどに任せている場合も多く、そうなると使用した部品の数もわからず、実在庫の把握は難しくなる。

さらに、拠点の適正な配置や人員の適正配置も含めて、これらのシステムを開発・維持することは膨大な費用がかかることになる。

しかし、日本の製造業の大部分は技術情報管理に多額の費用をつぎ込んでいるにも関わらず、問題は解決していない。

ガッバイ氏は「今のところ、日本では補修部品の在庫計画ソリューションの牽きが一番多いですね。PTCの技術情報作成・管理ソリューションにエニグマのテクノロジーが加わることで、確実な技術情報の伝達が行えるとともに、コスト削減にも大きく貢献できると思っています」と語る。

グローバル化時代に対応

製造業が国内だけでなく、海外との関係がより深くなっている現在。グローバル化の進行が進んでいる中、サービスマニュアルや技術情報も各国語に翻訳が必要になる。航空会社の整備マニュアルなどはテキストの本だけで、10数mにもなるという。必要な情報をピンポイントで見つけるのは容易なことではない。

そこで、マニュアルを部品化し、本当に必要な情報・内容だけを翻訳することにより、大幅な費用削減を図っている。ある建機メーカーでは、17言語で翻訳していたものを、同じ費用で40以上の言語まで翻訳できるようになったという。

グローバルに展開する企業では、製品の良し悪しとともに、今後はアフターサービスへの取り組みが非常に重要となる。それをPTCとエニグマはサービス拠点の数、場所、人員、部品点数の在庫などをトータルに最適化を図り、最小費用で最大効果を図る技術情報ソリューションを実現させたとしている。

CADとPLMの連携で可能にする

複雑な技術情報管理を可能にしたのが、PTCのCADの技術だ。CADの段階の情報を製造から販売、アフターサービスまで関連付けたソリューションを開発しているからだ。

メカニックやサービスなど、だれが何処で見ても、正確な情報が得られ、顧客への対応をバックアップする。これらのシステムをパソコンやタブレット端末で確認できるソリューションをPTCがエニグマを買収した結果、トータルで提供できることになった。

一つの画面から、サービス情報、設計・補修・パーツ情報などにアクセスできるようになった。さらに、ショッピングカートなどの機能も付加されている。

「エニグマ買収から4か月、1年をめどに、PTCとエニグマの技術を一つにしたソリューションを開発したいと思っています。ただ、完全に一つにするわけではなく、これまで使用していただいている顧客の利便性も考慮した上で、ソリューションの機能を増やしていきたいと考えています」とガッバイ氏は話す。

ライバルはメーカーの内製ツール

PTCではエニグマ買収を機に、日本での技術情報管理ソリューションの拡販を目指すが、まずはこれまで得意としていた自動車、航空機などの重工業関係、メディカル関係に力を注ぐつもりだ。

ガッバイ氏は「ライバルはメーカーの内製ツールです。まだまだ圧倒的に内製ツールにこだわっている企業が多く、その分PTCとエニグマにとって市場は無限にあると思っています」と強い期待感を示す。

また、「最近日本の企業からよく聞くのは、グローバル展開でパーツカタログや技術情報にアクセスする良いツールがないか、というものです。日本企業も探し始めているようです。その意味ではチャンスと見ています。特に、日本の企業の基本データはよく整備されていて、精度も質も高いので運用は非常にスムーズにいくと思います。欧州や米国では、データをいったんきれいに整備しなければならない作業が多く、その分日本では導入するときの作業が簡単に進行できるメリットがあります」と話す。

イスラエルに自宅があり、1年中出張で米国や欧州、アジア諸国を飛び回っているガッバイ氏。2001年から2005年12月まで日本に住んでいただけに、日本は住みやすい街と話す。ビジネスの夢をエニグマを成功させることと言い切り、売上目標については「顧客の喜ぶ顔が一番見たいです。売上はそれについてきます」と話した。

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■アッシャー・ガッバイ プロフィール
米PTC SLMセグメント セールス/事業開発担当 バイスプレジデント
イスラエル出身。ノースウェスタン大学 ケロッグ経営大学院より経営学修士号(MBA)、エルサレム ヘブライ大学より経営・政治学専攻文学士号、およびイスラエル オープン大学より人文学専攻文学士号を取得。

2013年7月のPTCによるエニグマ社買収により、PTCに入社。PTCサービスライフサイクル管理(SLM)セグメントのセールス/事業開発担当バイスプレジデントとして、PTC 技術情報とサービス部品情報ソリューションに含まれるPTC Servigistics InService ソリューションに関わるグローバルの営業と販売戦略の責任者を務める。

PTC入社前は、エニグマ社のグローバルセールス/事業開発担当バイスプレジデントを務め、それ以前は、東京を拠点としてアジア太平洋地区のエニグマ事業を統括。また、プロダクトマネジメント、プロフェッショナルサービス、セールスの各部門における上級マネジメント職を歴任した。1992年のエニグマ社入社以前は、金融市場向け電子情報発行サービス企業の最高経営責任者(CEO)や防衛関連企業での職務に従事した。

出張が多いため家族と過ごせる時間を大切にしている。フィクション、ノンフィクション問わず読書も楽しみ、特に歴史、哲学、ユダヤ教や政治に関する本をよく読むと言う。

■PTC概要
社名:PTCジャパン
住所:東京都新宿区西新宿6-8-1新宿オークタワー
TEL:03-3346-8100
年間売上高:未公表
資本金:5000万円
従業員数:250人

■PTC のSLMソリューションについて
http://ja.ptc.com/solutions/service-lifecycle-management/

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