国土交通省は5月8日、港湾における総合的な津波対策のあり方(案)を公表した。
これは昨年7月6日に中間発表を行った後、会議を重ね第5回の港湾分科会防災部会で、中間とりまとめからの変更点を含め発表されたもの。
「東日本大震災による港湾の被害・復旧状況と課題」、「港湾における地震・津波対策の基本的考え方」、「港湾における地震・津波対策の施策方針」の3つの柱でまとめている。
東日本大震災による港湾の被害・復旧状況と課題では、港湾関連公共土木施設の被害報告額を約4138億円としている。津波による被害、地震動、液状化による広域的な被害が報告されている。
港湾における地震・津波対策の基本的考え方では、今後、東海・東南海・南海地震が連動するなど海溝型地震による津波災害の強大化が指摘されるなか、構造物で津波からの浸水を防ぎきる対策だけでなく、津波による浸水を前提にした避難対策や構造物による減災効果も考慮した総合的な対策を検討する必要に迫られている。
東日本大震災では、被災者支援のための緊急物資の輸送や地域の生産活動の継続で港湾が重要な役割を果たした。こうした港湾の役割を踏まえ、事前の対策により被害を最小化し、被災直後においても最低限の重要な産業・物流機能を維持するとともに、たとえ被災したとしても、施設を迅速に復旧し、産業・物流機能を継続させるための対策を検討する必要がある、としている。
港湾背後の防護とともに、被災地でとり得る対策のみならず、国際的・全国的な視点から日本全体を俯瞰し、代替輸送ルートの設定やバックアップ体制の確立を通じて、災害に強い海上輸送ネットワークを構築する必要があるという。
港湾における地震・津波対策の施策方針では、港湾の津波からの防護、港湾の災害対応力の強化、災害に強い海上輸送ネットワークの構築に向けた対策の推進を挙げている。
港湾の津波からの防護では、防潮堤による背後市街地の防護、港湾における産業・物流機能の防護とともに、水門・陸閘等の施設の管理・運用体制の構築も挙げられている。
港湾の災害対応力の強化では、耐震強化岸壁を核とする港湾の防災拠点の形成、施設や機能の重要度に応じた耐震性・耐津波性の向上としている。
災害に強い海上輸送ネットワークの構築に向けた対策の推進では、海上輸送ネットワークの核となる施設における耐震性・耐津波性の向上、湾域において船舶航行の安全性を確保する対策の推進、広域的なバックアップ体制の構築等を挙げている。
6月上旬の第6回防災部会で、「港湾における総合的な津波対策のあり方」が取りまとめられる予定。
■港湾における地震・津波対策のあり方(案)
http://www.mlit.go.jp/common/000210679.pdf