ヴォコレクトの音声物流ソリューションは、世界の約60カ国2000社4000サイト(倉庫等)で現在稼働している。
日本ではまだなじみの薄い音声でのソリューションだが、徐々に大手企業を中心に浸透しつつある。
ジョー・ペイジャーは2010年にCEO兼社長に就任。2011年にはインターメックによる買収を受けたが、現在も独立したビジネスユニットとしてビジネス展開を図っている。インターメック傘下となった現状と今後の日本市場での狙いを聞いた。
<ジョー・ペイジャー社長>
インターメックとの関係はWinWin
――インターメックのヴォコレクト買収から半年以上経過したが、現在の状況は。
ジョー・ペイジャー(以下ペイジャー) ヴォコレクトはインターメックに買収されたわけだが、以前と同様、独立したビジネスユニットとして活動している。
私はヴォコレクトのCEO(最高経営責任者)として、インターメックのCEOのパット・バーンに報告をするとともに、インターメックのエグゼクティブメンバーにもなっている。ヴォコレクトのビジネス自体は変わっていない。
――インターメックの買収の狙いとは何だったのか。
ペイジャー インターメックは既存のポートフォリオの中にもっともっとロジスティクスを拡大したかったということだ。その中で、目を付けたのがヴォコレクトの音声物流ソリューションだった。
一方、ヴォコレクトとしては、インターメックの豊富な顧客とチャネル、ネットワークを活用した販売ができると考えた。WinWinの関係だ。
――その後WinWinの関係は構築できたか。
ペイジャー 世界の市場では大きく進展している。ただ、日本には残念ながらインターメックの支店はなく、あるのは代理店のみだった。
インターメックのシナジー効果に頼らずに独自にビジネスを行わなければならない厳しさはある。しかし、これまで進めてきたビジネス展開を続けていけるメリットもある。
日本市場はこれからが本番
――日本市場に進出して5年が過ぎ、内田社長が昨年5月に就任し業績もアップしていると聞いたが。
ペイジャー かなりの好業績を挙げていると思う。私も日本市場での難しさは家電やパソコンなどで経験があるのでよくわかっている。
日本市場では最初の2~3年は主要な企業にターゲットを絞り、その企業にフィットした音声物流ソリューションの開発に全力を挙げた。そして、内田が社長になってからは、より積極的な営業に努め、その成果が表れ出している。
――音声物流ソリューションを導入したいくつかの企業を訪問したそうだが、反応はどうだった。
ペイジャー いずれも高い評価をいただいた。話の中で、ヴォコレクトのシステムは柔軟性があり、作業効率がとても上がったという。
他のタスク(仕事)にも応用すれば、さらに業務改善が図られるとか、導入したことで25%から30%以上の生産性向上が図られたと聞いた。
音声物流ソリューションは納期通りのスピード、作業精度の正確さは当然ながら、従業員が主体となった仕事の形態になったことで、顧客に対するサービス精神も旺盛になり、付加価値を生む環境に変わってきた、とも聞いた。
――導入に際しての苦労も多かったと思うが。
ペイジャー 一番大きいのが音声だ。通話ができなければ意味がない。言葉は国によって音の強弱があり、その国の言葉が最も聴こえやすい調整を行うことが必要だ。たくさんの日本語を録音して調整した。例えば英語などはメリハリがあるが、日本語は言葉がソフト(抑揚が少なく)で、いかに聴き取りやすくできるかに努力した。
――日本市場については、これからが本番ということか。
ペイジャー そうだ。ようやく音声ソリューションについての理解が深まりつつあり、成功事例も多く生まれてきている。世界では約60か国で2000社4000サイトに、ヴォコレクトの音声ソリューションが導入されている。米・西欧のスーパーマーケットトップ100の内、テスコやクローガー、ウォルマートなど上位8割程度に採用してもらっている。
――現在の日本市場の状況は。
ペイジャー 現在、24社、30サイトで採用・導入してもらっている。
<ジョー・ペイジャーと話す内田雅彦ヴォコレクトジャパン社長>
2~3年で日本市場10%~20%シェア獲得へ
――このところ日本企業が中国に進出し、物流倉庫などの展開も盛んだが、中国市場での展開は。
ペイジャー 内田は日本と韓国が担当で、中国と東南アジア・インドは香港にいるヴァンス・ロー(アジア太平洋地域バイスプレジデント)が担当している。
内田雅彦ヴォコレクトジャパン社長 中国で展開する日本企業の場合、日本でまずしっかりと音声ソリューションの優位性を確認してもらうことが重要だ。その基盤の上に立ってローと協議して展開するつもりだ。
日本と韓国を私が担当しているが、両国は言葉の質が似ていることと、産業構造がよく似ていることが大きいからだ。中国は人手が多く、販売手法もかなり違ってくる。
――今後の展開で日本市場への期待度を聞かせてほしい。
ペイジャー このところ積極的な営業政策をとり、実績も上ってきているので、大きな突破口を得たと思っている。今後2~3年で大手企業を中心に10%から20%のシェアを獲得していきたい。その手応えはある。
ジョー・ペイジャー
1961年1月5日生まれ50歳。カーネギーメロン大学で建築学と工業政策学士号を取得。これまで20年以上電化製品、半導体、パソコン、ネットワーク製品などIT業界で要職を歴任。
ヴォコレクト入社前はピッツバーグのマルコーニ(現エリクソングループ)のブロードバンドルーター・スイッチ部門担当上級社長兼ゼネラルマネージャーを務め、FORE Systems、コンパック・コンピューター(現ヒューレット・パッカード)、AT&Tの各社でリーダー職を経験。2008年ヴォコレクトのサプライチェーンビジネス社長、2010年にCEO兼社長に就任。
趣味はアイスホッケーで、ピッツバーグ・ペンギンズのファン。日本にはすでに40数回訪れている。