物流最前線 MUJIN 物流倉庫自動化への挑戦

2019年10月18日 
物流最前線 MUJIN 物流倉庫自動化への挑戦 MUJIN
滝野 一征CEO兼共同創業者 インタビュー

2011年にロボットコントローラメーカーとして創業したMUJIN。産業用ロボットに「知能」を与え、複雑なプログラミング作業を必要とせずにピッキングロボットを動作できる「MUJINコントローラ」は国内外の物流倉庫で採用されており、同社も物流産業向けを中心に事業を展開している。今後も物流業界での製品の普及拡大に注力し、「倉庫作業の自動化に悩む企業の受け皿になりたい」と語る滝野一征CEO。MUJINコントローラの導入で実現できる自動化の姿や、今後の事業方針について話を聞いた。

<MUJINコントローラ>

MUJINコントローラ

アスクルやPALTACも採用、ピッキング自動化のMUJINコントローラ

――   MUJIN社の概要から。

滝野  MUJINは、ロボットの動きを制御するロボットコントローラ「MUJINコントローラ」を開発・販売している会社です。2011年7月に私とCTOの出杏光 魯仙(Diankov Rosen、デアンコウ・ロセン)で創業し、事業の拡大に合わせて現在(2019年9月時点)は102人まで人員を増やしています。オフィスも従来まで東京スカイツリーの傍に構えていたのですが、業容の拡大に伴い現在は江東区辰巳に移転し、新オフィスの本格稼働に向けて準備を進めているところです。

――   会社設立の経緯は。

滝野  ロセンCTOがMUJINコントローラの要になっている「モーションプランニング」という技術の権威者で、彼がその技術をどうやって使えば世の中に貢献できるかを模索していた際、当時、外資系切削工具メーカーの技術営業として現場の事情に精通していた私に声がかかり、それを一緒に考えた事がきっかけでした。

――   モーションプランニングとはどんな技術なのですか。

滝野  ロボットアームの軌道を自動で生成する技術です。例えば、目の前に置かれたペンを取ってみて下さい。ペンを取ったときの腕の各関節の動きを覚えていますか。完全に再現しろと言われても全く覚えていないと思います。人間はここにタッチしろとか、ここに行けといった指令を脳が受けたら、何も考えずに腕を動かすことができますよね。

でも、ロボットはその動作を実行するのに関節の角度やアームの進行方向、距離などをプログラミングで教え込む「ティーチング」という作業をしないと動けないのです。モーションプランニングは、このティーチングをしなくても対象物を画像で認識しさえすれば自動でロボットの最適な動作を計算し、自動生成してくれるという技術です。

――   ティーチングが不要になるメリットは。

滝野  ティーチング作業はとても複雑で、しかもロボットメーカーごとに操作方法が全く異なるため、プログラミングのプロでないと務まりません。作業に多くの時間を要しますし、専門のプログラマーを雇うための費用も1日あたり十数万円ほどかかります。

さらに、ピースピッキングなどの複雑な工程になると対象物によって形状や配置がまちまちで、商品の一つ一つに対してティーチングが発生してきます。そのうえ、対象物が少しでも変われば最初から設定をし直す必要があるため、ティーチングを用いたロボットでの自動化は非現実的であり、これが産業用ロボットの普及を妨げている要因となっています。

我々が開発した「MUJINコントローラ」は、ほぼ全てのメーカーのロボットに対応しており、3Dビジョンによって対象物の位置や姿勢を認識し、モーションプランニングによってロボットが自ら最適な動きを自動で生成するため、これらの課題を解消することができます。

――   MUJINコントローラはどんな産業に提供しているのですか。

滝野  製造業の工場向けと物流倉庫向けのほか、ロボットコントローラのOEMでも提供しています。なかでも、物流倉庫向けに力を注いでいて、売上全体の6割程度が物流です。

――   物流業界に注力する理由とは。

滝野  物流業では取り扱う商品が多種多様で、既存のロボットコントローラでは自動化が不可能だと考えたからです。例えば、自動化が進んでいる自動車工場では、一度設置した生産ラインは最低でも半年ほど継続して稼働するため、ティーチングの頻度が半年に一回で済みます。

ところが、物流の現場では超多品種を取り扱うため、ティーチングによる自動化が不可能です。これが物流の自動化を妨げていて、ティーチレス技術を実装したMUJINコントローラなら自動化が可能だと思い参入を決めました。

<アスクルの物流センターで採用されたMUJINのソリューション>

――   物流で最初の顧客となったのは。

滝野  2014年にアスクルさんからピッキング自動化の相談があったのが最初です。当時はまだ日本がリーマンショックから立ち直ったばかりで、むしろ働き口が少なくて困っている時代だったため、物流業で自動化を考える企業がまだいなかった時期でしたが、アスクルさんはEC事業を拡大しており、物流センターの生産性を上げるためにピッキングの自動化を検討していました。

――   アスクルにはどんな製品を納入したのですか。

滝野  自動倉庫へ入出庫される商品をピッキングしてコンテナに積み込む工程に、MUJINコントローラを含むソリューションを提供しました。物流倉庫には工場とは異なり専門のシステムインテグレーターが常駐していないので、ロボットの設置から立ち上げまで一貫したソリューションとして提供しています。

――   それ以外の採用企業は。

滝野  物流業では、PALTACさんのセンターでパレットから荷物を積み下ろすデパレタイズ作業に採用されました。また、海外では中国EC大手の京東集団さんが上海に立ち上げた世界初の完全無人倉庫にも、入庫とピッキング、商品を包装機へ投入する工程で採用されています。製造業でも、アイシン・エィ・ダブリュさんやバルブメーカーのキッツさんなどの工場で、部品のばら積みピッキング工程の自動化を実現しています。

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