アマゾン/物流網整備が、輸送コスト削減に寄与

2018年06月19日 

6月18日に公表された日銀レビュー「インターネット通販の拡大が物価に与える影響」で、アマゾンの物流網整備について、輸送コスト削減に寄与したと分析している。

ネット通販の拡大に伴う競争環境の変化が、わが国の消費者物価にどのような影響を与えているのかという点について、物流ネットワークの拡充に伴う輸送コストの削減効果に注目した。

わが国を含む10か国において、ネット販売価格(ウェブ・スクレイピングという技術を使って提示価格を幅広く収集)と実店舗販売価格(実際に調査員が店頭にて価格情報を収集)のデータを大量に収集して両者を比較した先行研究によると、多くの国ではネット販売価格のほうが実店舗よりも割安になっている。

ネット販売価格が相対的に低く抑えられている背景に、実店舗を持たないことによる各種コスト削減効果があるものと考えられる。

こうしたコスト面での競争力は、ネット通販各社における物流ネットワークの整備を背景に、近年一段と高まってきているものとみられる。

<Amazon配送センター(FC)からの平均輸送距離の日米比較>
Amazon配送センター(FC)からの平均輸送距離の日米比較
注:日本の距離は、各年末時点での都道府県ごとの距離を人口で加重平均して算出。都道府県ごとの距離は、各都道府県の人口重心と現在存続しているとみられる最寄りの配送センターの直線距離。配送センターの設置時期については、報道情報などから推定。報道情報等では計画段階にあるとされる北海道の配送センターが2018 年末までに開業されると仮定。
(出所:総務省、Amazon、Houde, J-F., P. Newberry, and K. Seim (2017), “Economies of Density in E-Commerce: A Study of Amazon’s Fulfillment Center Network,” NBER Working Paper.)

実際、米国におけるAmazonの配送センター(Fulfillment Center<FC>)の増加に注目した研究で、全米各地にわたるFCのネットワークを構築することで、FCから宅配会社の配送拠点への平均輸送距離を短縮し、自社の配送コストを引き下げてきたという分析結果が示している。

同研究では、こうした配送コストの削減が販売価格の低下にも繋がってきた可能性も指摘している。

この研究に倣い、わが国におけるAmazonの配送センターの設置状況をもとに、消費者への平均輸送距離を試算すると、米国と同様に、わが国においても輸送距離の短縮が進んできたことが確認できた。

<都道府県別にみたAmazon配送センター(FC)からの平均輸送距離>
都道府県別にみたAmazon配送センター(FC)からの平均輸送距離
注:都道府県ごとの距離は、各都道府県の人口重心と現在存続しているとみられる最寄りの配送センターの直線距離。配送センターの設置時期については、報道情報などから推定。
報道情報等では計画段階にあるとされる北海道の配送センターが2018 年末までに開業されると仮定。最も濃い赤は、その都道府県内に配送センターが所在。その次に濃い赤は、別の都道府県だが100km以内に配送センターが所在。薄い赤は、100km 超200km以内に配送センターが所在。
(出所:総務省、Amazon、報道各社)

こうした状況をより直感的に把握するため、配送センターからの距離に応じて都道府県を色分けすると、過去10年弱の間に、多くの地域で輸送距離が短縮されてきたことがわかる。

配送センターの整備が急速に進んでいることは間違いなく、他のインターネット通販企業のものを含め大量の集荷・配送を捌くため、倉庫の建築が近年大幅に増加している。

輸送距離の短縮は、ネット通販企業のコスト競争力を高める方向に寄与してきたものとみられる。

人手不足を背景とする物流コストの増加は、ネット通販企業のコスト面での競争力を弱めることを通じて、既存の小売企業との競争環境を緩和させる方向に作用する可能性がある。

また、これまでコスト削減に寄与してきた配送網についても、充実化の余地が少なくなってきていることも考えられる。

さらに、競争の結果として業界内での淘汰が進み、インターネット通販業界における一部企業の寡占度が大きく高まれば、インターネット通販企業の価格設定行動が変化する可能性もあるとしている。

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