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物流最前線 DeNAの挑戦・交通事故のリスクをAI×IoTで削減

2019年08月26日/物流最前線

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モバイルゲームやプロ野球球団でおなじみのディー・エヌ・エー(DeNA)。しかし、オートモーティブ分野に参入していることは意外と知られていないだろう。同分野ではヤマト運輸や日立物流といったパートナー企業と新たなサービスの開発に取り組んでおり、今年6月にはAI・IoT技術を活用した商用車向け交通事故削減支援サービス「ドライブチャート」を開始した。交通事故削減は物流事業者にとって避けては通れない課題なだけに、その効果には期待が高まる。ドライブチャートの事業責任者であるオートモーティブ事業本部スマートドライビング部の川上 裕幸部長に、サービスに懸ける無事故社会実現への思いを聞いた。

川上部長

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AIでドライバーの運転を「見える化」し、運転管理を効率化

―― オートモーティブ事業の成り立ちは。

川上  オートモーティブ事業本部の設立は2015年です。設立当初は、カーナビアプリ「NAVIRO(ナビロー)」や、個人間カーシェアリングサービス「Anyca(エニカ)」などをリリースしたほか、自動運転技術を開発しているZMPと合弁会社のロボットタクシーを設立し、自動運転タクシーの実証実験などに取り組みました。以降は、タクシー配車アプリ「MOV」や、日産自動車と共同開発した自動運転車両による交通サービス「Easy Ride(イージーライド)」などのサービスを提供。物流分野では、ヤマト運輸と共同で自動運転車を使った宅急便の配送実験を行いました。

―― なぜ交通分野へ進出することになったのですか。

川上  1つは、事業を多角化するためです。DeNAは収益の7割がゲーム事業で構成されていたので、新たな収益の柱を作るためにいくつかの新規事業を創出することが必要で、その一つがオートモーティブでした。もう1つの理由としては、DeNAが掲げる「事業を通して喜びを提供する」というコンセプトによるものです。従来はゲームやエンターテインメントといった形で喜びを提供してきましたが、少し視野を広げてより本質的な社会課題の解決に取り組むことを目指し、交通弱者や交通難民などさまざまな課題を抱える交通分野に対して、我々の培ってきたインターネットやAIの力を生かせるのではないかと思い参入することになりました。

<ドライブチャートの概要>

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―― 6月には商用車向け交通事故削減支援サービスとしてドライブチャートの提供を開始しました。

川上  ドライブチャートは、車内外を映す専用車載器の映像と加速度センサーやGPSを元にAIで危険運転状況を可視化し、運転特性をドライバーと管理者の双方で共有し把握・改善することができる事故削減システムです。運転状況の振り返りや運転特性に応じた指導を行うことで、交通事故削減の効果が期待でき、車の挙動だけでなく、カメラの映像を車載器内で即座にAIで解析して地図情報などと組み合わせることで、習慣化された危険運転行動やドライバーの状態に潜むリスクまで検出することを可能にしました。

―― ドライブチャートの開発を決めた経緯は。

川上  交通関連の事業を進めていく上で、安全や安心に貢献していくという事が前提としてありました。日本では件数は年々減少しているものの、未だに膨大な数の交通事故が起きています。この問題の解決に向けて、DeNAが持っているインターネットなどの技術で貢献していきたいと考え、そこに対してどのようなアプローチが可能か、何ができるかを検討してきた結果、ドライブチャートというサービスの開発に至りました。

―― ドライブチャートと一般的なドライブレコーダーとの違いは。

川上  ドラレコには警報を出したり、大きな衝撃が起きた際に映像を記録するイベント録画など、さまざまな機能が付いていますが、メインの役割は事故が起きた時の「証拠を残す」部分にあります。一方、ドライブチャートは証拠を残すという役割はもちろんありますが、それ以上にドライバーの運転を数値として「可視化」するという役割に重点を置いています。

―― 可視化することによるメリットは。

川上  例えば、物流事業者はドラレコが記録した映像をドライバーの運転状態などの管理に役立てていると思います。ですが、ドラレコが映像として記録している情報量は膨大で、チェックするのに大変な手間と時間がかかりますよね。そのため、多くのドライバーを抱えている企業や、逆に人手不足で管理者があまりチェックに時間を割けないような企業は、ドラレコを使ったドライバーの運転管理を継続するのが困難になってしまいます。

DeNAとしては、ドラレコを活用した運転管理はドライバーの運転行動を改善するのに非常に重要な事だと認識しており、非効率な部分をAIで効率化することが交通事故の削減に有効だろうという仮説を立て、システムの開発に乗り出しました。

<ドライブチャート>

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―― ドライブチャートの機能を実現できた要因は。

川上  やはり、AIは大きな要素の一つだと思います。AIで映像を解析できる技術を持てたというのが大きく影響していて、それが無ければ今のサービスの形にはならなかったと思います。

―― AIの画像認識技術はどうやって開発したのですか。

川上  画像認識自体はAIの中でも積極的に研究されている分野で、そういった研究を長年やってきたメンバーがDeNAに在籍していました。そういう知見を持ったメンバーと話し合い、一緒に検討を進めていった結果、現在のドライブチャートの形になりました。

―― AIの開発チームが社内にあるのは大きな強みですね。

川上  はい、どうしても外注すると自由度が低くなってしまいますので、社内で一貫して開発できたというのは作業もしやすかったですし、強みの一つだと認識しています。

<AI画像認識(外向き・内向きカメラ)>

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