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ヤマトHD/大手1000社と価格交渉開始

2017年06月08日/SCM・経営

ヤマトホールディングスは6月8日、山内雅喜ヤマトHD社長と長尾裕ヤマト運輸社長が出席して、4月13日発表の「働き方改革」と4月28日発表の「デリバリー事業の構造改革」についての背景と進捗状況を説明した。

ヤマト運輸の「働き方改革」では、基本骨子を「労務管理の改善と徹底」、「ワークライフバランスの推進」、「サービスレベルの変更」、「宅急便総量のコントロール」、「宅急便の基本運賃の改定」としている。

<山内雅喜ヤマトHD社長>
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山内社長は「働き方改革」の背景を、急激な環境の変化の中、高品質な宅急便を継続・発展させたいとするなら、安心して働いてもらえる健全な労働環境が必要。これを経営の最重要課題として、あらゆる領域まで踏み込んで実践していくとしている。

「ヤマトグループの3つの軸はコンプライアンスの徹底、ダイバーシティの推進、業務の見直し、効率化で企業価値の最大化を図ること。このうち、ダイバーシティの推進では、時間・場所にとらわれない多様な人材の採用を進めている。テレワークやサテライトオフィスなど、ICT活用で働き方が選択できるように試験的に進めている。また、業務の見直しでは、ムリ、ムダ、ムラのない標準化を進めること。標準化の推進がICT化にもつながる。また、ヤマト運輸では働き方改革委員会を開催し、経営のトップ、役員、幹部が加わり、第一線の社員の声を聞くことに努めている。ただ、具体的な成果を数字で表すにはまだ時間がかかる」と山内社長は説明した。

<長尾裕ヤマト運輸社長>
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デリバリー事業の構造改革については、ヤマト運輸の長尾社長が、「労働需給の逼迫でこの半年ほどは従業員獲得が非常に厳しい状況。集配だけでなく、バックヤードの要員、パート・アルバイト社員についても同様。Eコマースの伸張で、宅急便の数量以上の伸びを示しているこのタイミングで事業の構造改革を変えていこうと考えた。5月12日に発表した価格改定もその一つ」とし、大口顧客への説明では、「大口専門の全国69の主管支店から組織を法人営業支店に組織替えし、対象企業を約1万社とし、そのうち、1000社を対象に交渉をスタートしている。すでに着地点が見えてきた企業もある。取扱荷物量を8000万個減らす計画では、下期あたりから動きがでてくるだろう」と語った。

また、オープン型宅配ロッカー「PUDOステーション」については、今月末には500台、上期中に1000台、来年3月までに3000台と設置のスピードを前倒ししている。駅、スーパーで設置が進んでいるが、工場、オフィス、賃貸アパート、大学でも進んでいるという。オープン型だけに、佐川急便も利用しているが、ここ最近の宅配ボックスの規格乱立については「やはりオープン型が理想。そのカギはITでコミュニケーションできるかどうか。需要動向を確認しながら、宅配ボックス会社にも働きかけをしていきたい」と長尾社長。

続けて、山内社長は「宅配ボックスは社会インフラとして使えるようにしたい。宅配ボックスの規格が乱立して、機能が重複するのは無駄なので、社会インフラと考えるなら戸建ての宅配ボックスを除き、オープン型が必要。誰しもが同じやり方、同じように使えるようにしないと社会インフラにはならない。インフラとは、世の中に必要で、信頼性と継続性を併せ持ったもの」と話した。

なお、下期からはPUDOから直接発送できるシステムを整えるほか、7月からは最初からロッカーで受け取る対応も図るという。

一方、ヤマト運輸の未払残業代については未払いの残業代の有無を調べ、支給すべき未払い分をすべて支払う方針だが、長尾社長は「従来手法だと残業は減らないと思う。これまで集配のセールスドライバーの働き方は1種類しかなく、今後は新しい社員をさまざまなバリエーションで勤められる形態にしていきたい。働き方の選択ができるように、いま協議しているところだ」と説明した。

山内社長は「多様な働き方ができる環境を整えていきたい。例えば、宅配ロッカーやコンビニなどは、従来のセールスドライバーでなくても良い。ヤマトのステークホルダーは顧客、社会、社員、株主だが、全体の価値を高めるには、今は優先順位として従業員を最優先としている。従業員の価値が高まれば、それは会社、株主にも反映し、社会にも反映する。そして人材募集や待遇など、最終的には業界全体が良くなることが大切だ」と述べた。

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