厚生労働省は10月7日、「2016年版過労死等防止対策白書」を発表した。
過労死の要因は様々だが、そのうち、就業者の脳・心臓疾患では、5年ごとに実施される人口動態職業・産業別統計によれば、減少傾向で推移しており、2010年度は3万人余りとなっている。
脳・心臓疾患に係る労災請求件数では、その請求件数の1位が「運輸業、郵便業」の181件(22.8%)、「卸売業、小売業」116件(14.6%)、「建設業」111件(14.0%)の順で多く、支給決定件数は「運輸業、郵便業」96 件(38.2%)、「卸売業、小売業」35 件(13.9%)、「製造業」34 件(13.5%)の順に多くなっており、前年度に引き続き、請求件数、支給決定件数ともに「運輸業、郵便業」が最多となっている。
<2015年度脳・心臓疾患の請求件数の多い業種(中分類の上位15業種)>
※( )内は女性の件数で内数。
業種別(中分類)では、請求件数は「運輸業、郵便業」の「道路貨物運送業」133件(16.7%)、「建設業」の「総合工事業」48件(6.0%)、「サービス業(他に分類されないもの)」の「その他の事業サービス業」45件(5.7%)の順で多く、支給決定件数は、「運輸業、郵便業」の「道路貨物運送業」82件(32.7%)、「建設業」の「総合工事業」16 件(6.4%)、「宿泊業、飲食サービス業」の「飲食店」15件(6.0%)の順に多くなっており、請求件数、支給決定件数ともに「道路貨物運送業」が最多となっている。
<月末1週間の就業時間が60時間以上の雇用者の割合(業種別)>
<月末1週間の就業時間が60時間以上の雇用者の割合(職業別)>
就業時間では、業種別に、雇用者に占める月末1週間の就業時間が60時間以上の者の割合をみると、2015年は、「運輸業、郵便業」、「建設業」、「教育、学習支援業」の順に、その割合が高く、「鉱業、採石業、砂利採取業」、「医療、福祉」、「複合サービス事業」、「電気・ガス・熱供給・水道業」の順に、その割合が低い。
また、2015年の割合について、2010年と比較すると、多くの業種で減少しているが、「電気・ガス・熱供給・水道業」、「運輸業,郵便業」、「教育、学習支援業」では、その割合が増加している。
さらに、総務省「就業構造基本調査」により、職業別に、年間就業日数が 200日以上の者のうち、月末1週間の就業時間が60時間以上の雇用者の割合をみると、2012年は、「輸送・機械運転従事者」で最も高くなっており、次いで、「保安職業従事者」、「農林漁業従事者」の順に高くなっている。
一方、「事務従事者」、「運搬・清掃・包装等従事者」、「生産工程従事者」の順に、その割合が低くなっている。
なお、労働者1人当たりの年間総実労働時間は、1993年にかけて大きく減少し、その後も緩やかに減少している。2015年は前年比7時間の減少となっており、3年連続で減少している。
総実労働時間を所定内労働時間、所定外労働時間の別にみると、所定内労働時間は長期的に減少傾向が続いている一方、所定外労働時間は、過去20年程度、増減を繰り返しつつ、おおむね年間 110~130 時間の間を推移している。
この白書には、病気以外の職場の人間関係やパワーハラスメント等での自殺等の要因等にも触れている。
■2016年版過労死等防止対策白書
http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/karoushi/16/dl/16-1.pdf