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アパレル・サプライチェーン再構築/商取引慣行の改善が不可欠

2016年07月11日/調査・統計

経済産業省は、アパレル・サプライチェーン研究会報告書をとりまとめた。

<アパレル業界の利益配分のイメージ(ヒアリングにより経済産業省作成)>
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アパレル業界の課題として、サプライチェーン内の関係を再構築していくためには、商取引慣行の改善が不可欠としている。

アパレル企業と製造事業者の間では、歩引きや未引取といった非合理的な商慣行が存在し、近年はかなり少なくなったといわれているものの、こうした商慣行は未だに残っていると言わざるを得ないという。

アパレル企業と百貨店の間では、懸案となっている休業日、営業時間や販売員の派遣などの諸課題について、改善に向けた検討も行われているが、ショッピングセンター等課題はまだ残されている。

<日本の繊維産業の典型的なサプライチェーン(ヒアリングにより経済産業省作成)>
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日本のアパレル産業は、製造・卸・小売が分業されており、産業構造・サプライチェーンが分断されている。製造においても、原糸の製造、生地の製造、糸及び生地の染色加工、縫製の各段階も分業構造となっていることに加え、各工程間で地理的に離れている場合もある。

こうした分断的産業構造がもたらす影響により、日本の強みを生かした商品づくりが困難にしており、日本の素材は、海外ブランド等から高く評価され、輸出が拡大する一方で、アパレル・小売については、中国等からの輸入依存が強くなり、国内製造事業者との結びつきが希薄化になっている。

他方、消費者ニーズを的確に把握し、糸や生地から作り込み、デザインも優れた洗練された衣料品を高い原価率のもと供給するアパレル企業が出てきており、消費者の支持を得ている。

サプライチェーンにおける連携強化は、生活の質の向上をもたらす製品の開発を促すためにも、重要な課題と位置づけられる。

政府が担う環境整備として、サプライチェーンの再構築支援を提案している。

サプライチェーンの企業間の結びつきを高める観点から、J∞QUALITY企業認証を取得した製造事業者をデータベース化して、英文を含め誰でも用意に検索できるようなシステムの開発・導入を支援する。

アパレル製品の製造工程の効率化や企業間の情報共有化を図るためには電子データ交換(EDI)システムやRFIDなどを製造工程に導入について、それぞれのシステムの基盤となっている製品コードやビジネスプロトコルが統一されておらずサプライチェーン全体として、こうしたシステムの導入が進んでいない。

このため、JANコードを参考として、原料から素材、副資材等に至るまで統一した製品コードの策定について、アパレル業界の関係者とともに検討を開始する。その際には、国内のみならず、取引のグローバル化に対応した仕組みとなるよう検討を行う。

さらに、イージーオーダーに関する伝票の統一化等、共通フォーマットの作成についても検討を行う。

RFIDの利活用について、販売効率化や在庫の適正管理のみならず、工場まで含めたサプライチェーンの効率化とトレーサビリティの確保につながるような仕組みを構築すべく、モデル実証への支援を行う必要がある。

製造事業者からアパレル企業、消費者といったプレイヤーのつながりを抜本的に改善する切り札としてデジタル技術をファッションに活用する「ファッションテック」の取組の活性化をIoT推進ラボ(http://iotlab.jp)の支援プロジェクトなどにより促すとともに、「ファッションテック」自体の海外展開に向けて適切なショーケースの方策を検討する。

報告書では、事業者の課題、政府の課題とともに当面の取組を提起しているが、解決策について、今後、関係者の間でさらに議論を重ねるとともに、具体的な取組が進んでいくことを期待している。

■アパレル・サプライチェーン研究会報告書
http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/seizou/apparel_supply/pdf/report01_01_00.pdf

■将来に向けた意欲的なチャレンジの事例
http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/seizou/apparel_supply/pdf/report01_02_00.pdf

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