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日本気象協会/「天気予報で物流を変える」人工知能活用で予測精度向上

2015年10月26日/生産

日本気象協会は10月26日、天気予報で物流を変える「需要予測の精度向上・共有化による省エネ物流プロジェクト」(本事業)2年目となる2015年度は、本事業に参加する民間企業が初年度から13社増え、22社となったと発表した。

「人工知能」の研究機関の協力なども得て、幅広い品目でさらなる需要予測の精度向上に取り組むことで、廃棄や返品に伴って不要に発生している二酸化炭素(二酸化炭素ロス」)の5%削減を目指す。

事業初年度である2014年度の成果を用いて、参加企業の「冷やし中華つゆ」を事例に生産量を調整したところ、2015年8月末時点で2割弱の在庫圧縮が確認できた。

<現状>
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<需要予測の精度向上・共有化による省エネ物流プロジェクト>
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食品の物流では一般的に、食品メーカー(製)、卸売事業者(配)、小売事業者(販)の各社がそれぞれ独自に、気象情報や各社が持つPOS(販売時点情報管理)データなどに基づいて需要予測を行っている。

しかし、製・配・販各社が需要予測で用いるデータは十分に共有されておらず、各流通段階にて生産量や注文量にミスマッチ(予測の誤差)が発生するため、廃棄や返品などの無駄が生じる一因となっている。

そこで、本事業では、日本気象協会が気象情報に加えてPOSデータなどのビッグデータも解析し、高度な需要予測を行ったうえで製・配・販の各社に提供する。気象情報には、「アンサンブル(集団)予測」を用いた長期予測なども活用し、需要予測の精度をさらに向上させる。これにより、食品の廃棄や返品などを減少させ、二酸化炭素ロスの5%削減を目指している。

事業初年度の2014年度は、対象地域を関東に、対象品目を天候や季節による需要の変動が大きい「豆腐」と「冷やし中華つゆ・鍋つゆ」の3品目に限定していた。

2015年度は対象地域を全国に拡大し、対象商品もネスレ日本のコーヒーやポッカサッポロフード&ビバレッジの炭酸飲料など、2014年度同様、天候や季節による変動が大きい数十商品に拡大する。そして小売事業者と連携して無駄の削減に取り組む。

また、POSデータ解析には今年度から、ローソンやバローホールディングス、カメガヤのデータを用いる。

このPOSデータ解析では、2015年5月に設立された国立研究開発法人産業技術総合研究所「人工知能研究センター」などの研究機関も参加し、人工知能技術を用いて顧客行動分析など汎用性のある解析を実施する。

また、小売店のPOSデータだけでなく、ツイッターなど消費者の発信するSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の情報を用いて体感温度なども解析し、需要予測への反映を目指す。

今後の方針として、初年度の成果を踏まえ、2015年度は製・配・販にまたがる実証実験を実施し、製・配・販の連携を目指す。日本気象協会がMizkan、相模屋食料に需要予測情報を配信し、食品メーカーが需要予測情報に基づいて生産調整を行う。

今後は対象商品を食品に限らず、気象条件によって廃棄、返品などの無駄が生じているすべての商品に広げ、対象地域も世界へ拡大していく予定。また、各流通段階で適正な在庫を確保することで、商品の安定供給を可能にし、最終的に消費者もメリットを得られるビジネスモデルの構築を目指す。

なお、この事業は経済産業省の2014年度、2015年度の「次世代物流システム構築事業費補助金」の採択事業。

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