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山九/輸入増加に備え、物流施設を拡充し、顧客の要望に応える

2014年11月12日/物流最前線

山九は物流と機工を融合させたユニークな企業として知られる。早くから海外進出を進め、中国、東南アジアでネットワークを確立している。

2013年に、「ロジスティクス」、「プラント・エンジニアリング」、「オペレーション・サポート」を有機的に結び付けたビジネスモデルのマーク、「ユニークマーク」を制定し、体制を整えている。

ロジスティクスの責任者である米子哲朗取締役常務執行役員に今後の戦略を聞いた。

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物流業界は曲がり角に来ている

―― 物流業界の現状は。

米子 以前に調べたことがあるのですが、日本の物流コストは2011年で41兆円、売上高に占める物流費は2013年で4.7%です。
この数字はおそらく現在もさほど変わりないと思います。円安が続き、荷主さんは本業回帰、物流はアウトソーシングし、物流費のコストダウンを図っています。しかし、それもそろそろ限界にきているのではないかと思います。物流業界もドライバー不足が深刻で、配送コストを値上げせざるを得ないという動きも強まっています。

―― 最近の調査では物流費が上昇傾向です。

米子 そうですね。物流費が増えるということはある程度売上高も上がっていることで、物流業界では上向きの市場環境ということができます。ただ、東日本大震災以降、建設業界では人手不足が深刻でしたが、それが物流業界にまで広がっています。トラックドライバーの不足は、少子高齢化や中型免許の採用、長時間労働の規制など様々な要因が絡み、若い人が就業しずらい業界になりつつあります。荷主さんからはまだまだコストダウンの要求は続くでしょうし、その中で顧客の期待にいかに応えていくか、どう兼ね合いをとっていくかが重要です。物流業界は今、曲がり角に来ていると思います。

―― 二律背反の課題です。

米子 例えば、扱う荷物の種類が変ってきたことも大きいです。EC(イーコマース)系では、コンビニ受け取り、配送費無料などの普及で、物流が一般顧客からは見えにくくなっています。玄関先で受け取ると「配送」されたと実感しますが、コンビニだとまったく意識されないことになります。これでは配送料が無料などというあらぬ誤解を招きかねます。物流業界も、従来型のモノを運ぶだけの形態から、提供の仕方を変えていく。それによって、物流費が増大する部分を吸収していく努力が必要です。

<西神戸外観パース>
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<平和島ロジスティクスセンター外観バース>
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輸入増加に備え先進物流倉庫を整備

―― 中間決算を終え、売上高は前年同期比12.6%増、ロジスティクス部門でも7.1%増と好調です。

米子 国内では輸入を中心に主要港でのコンテナ取扱量が増えました。港湾物流はコンテナが増えると、固定費は変わりませんから利益が増加することになります。また、3PL事業では電子部品・化成品等の取扱量が増加しました。海外では、同様に電子部品、化成品の増加とともに、医薬関連品、自動車部品関連物流が順調に推移しました。

―― 輸入が増加していると。

米子 従来、円安が進むと生産が活発になり、輸出が増えると思われていましたが、今やそうでもないのです。メーカーの生産が海外にシフトして、海外で生産したものを日本に輸入するほうが安く供給できる体制が作られています。さらに、海外メーカーも中国や東南アジアで生産し、日本に輸出しています。

―― 輸入の増大の対応策は。

米子 国内整備を着々と進めている最中です。元々、輸出に関しては大きな倉庫は必要なく、メーカーの工場などで荷積もできますが、輸入は高機能の流通倉庫でないと対応できません。それも各地に大型の物流センターを構えておく必要があります。倉庫会社も首都圏、関西圏などで巨大な倉庫を数多く作られていますね。

―― 山九も大型の物流センターの開発を発表しています。

米子 2015年4月には、平和島流通センターの老朽化に伴い大型物流拠点を新設し、平和島ロジスティクスセンターが竣工。西神戸物流センターも竣工します。平和島ロジスティクスセンターが4万7000㎡、西神戸物流センターが2万9000㎡の延床面積の大型倉庫です。2017年には、大阪夢洲の4万2000㎡の土地に物流センターを建設します。九州には既存の倉庫がありますが、福岡アイランドシティ―に5280㎡の土地を確保しています。

―― これらの物流施設は輸入対応ということですか。

米子 そうです。輸入品に対応するには、倉庫も保管型から流通型に変化し、さまざまな流通加工など付加機能を持つ先進の物流倉庫が必要になります。まだまだ開発は続きますし、現在はその体制を整えている真っ最中と言えます。

海外展開は中国と東南アジアが基本

―― 海外展開も盛んです。

米子 海外展開と言っても、山九は東南アジアと中国に集中しています。1971年の山九シンガポール設立から40年以上の実績を重ねています。現在、海外現地法人は40あります。意外と思われるかも知れませんが、今後、台湾への進出を検討しております。元々、台湾にはあったのですが、中国本土進出を優先したものですから、途中で撤退していたものです。

―― 中国から周辺諸国に生産を移す企業が増えています。

米子 チャイナ+1ですね。確かに、中国は世界の生産工場と言われた時代から大きく変化しています。労務コストの上昇が激しく、それに伴って豊かになった国民により、消費大国としての市場として注目を集めています。例えば、アパレル生産ですと、インナーなどはミャンマーやベトナムなどの国で生産し、中国ではもう少し付加価値の高いジャケットなどの生産に切り替えているそうです。2014年竣工予定の青島の物流センターはそのためのものです。また、ベトナムサイゴンにもアパレル用の物流センターを作っています。

―― 中国のネットワークは。

米子 広州、上海、香港、北京をはじめ、中国主要都市に14の現地法人を持ち、成熟したネットワークを形成し、物流網は完成しているといっても良いでしょう。

―― 中国から鉄道で欧州に輸送する動きが注目されています。

米子 今のところ欧州は考えていませんが、中央アジアやインド、中東には注目しています。ただ、物流で入っていくというよりも、インフラ整備などでプラント輸出に伴って進出ということになると思います。着実に足場を固めて実力を蓄えて西に向かうということです。

<ユニークマーク>
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ユニークマークを全面に打ち出す

―― ユニークマークを制定しましたね。

米子 2013年に制定したものですが、全社挙げてこれを全面に掲げて企業活動を行っています。ロジスティクス、プラント、オペレーションサポートの3つを有機的に結び付けて展開していることを分かりやすく図示したものです。事業分野としてはロジスティクスとプラントですが、オペレーション・サポートは両者のサポートということになります。

―― ロジスティクスとプラントとの融合が大きな特徴です。

米子 この二つを持っていることで、ビジネスチャンスは多く生まれます。切り口がたくさんあるということは大きな強みです。プラントの企画段階から、設計、建設、重量物輸送、据付、試運転までトータルサポートでき、設備のメンテナンス、調達、生産、販売の各種物流業務まで行うわけですから、すべてを任せてもらえる体制を整えています。

―― 全てを任せる発想はロジスティクスでは、3PL業務ですね。

米子 3PLの考え方は様々ですが、山九では一括して物流を請け負う仕事と認識しています。以前からアセット、ノンアセット関係なく、化成品メーカーさんの日雑品などで行っていましたので、当社の原点ですし、3PLビジネスについては先行していた分自信も自負もあります。ロジスティクス事業の売上のうち、約1/3が3PLの業務です。

―― 海外出張が多く、ご苦労された点も多いのでは。

米子 これからメキシコとブラジルに行きます。月に2回程度は海外出張ですね。海外では日本の常識が通じないので、交渉事では必ずサインをもらわないと後で必ずもめます。その点さえしっかり守っていれば、ストレスもなく、ビジネスを楽しめます。海外は食事の楽しさとともに、いろいろなビジネスチャンスがあることに気づきますね。その点でも、意外と海外出張は好きですね。

―― 読者にメッセージを。

米子 山九は顧客の期待に応えられる物流サービスには絶対的に自信があります。重いものから軽いもの、国内でも海外でも、3PLの提案もできるなど、顧客の期待に応えられる体制は整っていると思っています。

<米子哲朗取締役常務執行役員>
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■プロフィール
生年月日:1955年7月3日生まれ
学歴
1978年3月:法政大学経営学部卒業
職歴
1978年4月1日:山九運輸機工入社
1980年10月1日:社名を山九に変更
2002年4月1日:横浜支店長
2005年4月1日:理事
2007年4月1日:ロジスティクス・ソリューション事業本部副本部長
2007年6月28日:執行役員
2009年4月1日:ロジスティクス・ソリューション事業本部副本部長兼港運部長
2010年4月1日:ロジスティクス・ソリューション事業本部副本部長
2013年4月1日:事業・エリア管掌付(特命事項担当)
2013年6月27日:取締役兼執行役員
2014年4月1日:取締役兼常務執行役員(現在)
ロジスティクス・ソリューション事業本部長(現在)

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