トヨタL&F/総合物流管理システム構築

2012年01月04日 

総合物流管理システム構築でトヨタL&Fは日本インフォア・グローバル・ソリューションズと手を結んだ。

ERP系、WMS系、マテハン系、そして作業系でお互いの熟知した分野での全体最適を目差す。その背景にはTPS(トヨタ生産方式)につながる徹底したムダを省く思想がある。

トヨタのエンジニアリングによる付加価値を最大化するコラボレーションが誕生した。その狙いと目差すべき方向性をトヨタL&Fの三氏に伺った。

<左から山崎氏、斎須氏、阿曽氏>
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トヨタの物流エンジニアリングは徹底した現地現物主義から生まれる

エンジニアリングとマテハン機器を展開するトヨタL&FカンパニーとWMS(倉庫管理システム)などを展開しているインフォアが総合物流管理システム構築で、2011年から協業を開始した。協業はスタートしたばかりで、進行中の案件はあるものの、完成形はまだない。

今後どのような展開になるか楽しみだが、両社の協業はどうして実現したのか、そしてどのような意味を持つのだろうか。まずは両社の業務とその背景にある企業思想を見てみよう。

トヨタL&Fの物流エンジニアリング事業には特徴がある。同社が案件を受けた場合の計画・実施ステップでは、調査・分析から始まり、設計、施工、アフターサービス、そして運用となっているが、他の多くの競業企業と変わらないステップとなっている。

しかし、まず大きく違うのは「調査・分析」のステップだろう。同社齋須担当部長は「ここに一番時間と労力を使いますね。顧客ニーズを把握して、ローコスト化の視点でムダ、ムラ、ムリを徹底的に排除したシステム作りの基本となるところですので、力を注いでいます」と話す。現場に乗り込み、徹底的に調査・分析するとのことだ。

そのため、顧客との信頼関係が築かれていないと、「なぜ、こんなに時間がかかる。言われたことだけやればいい」などと言われることも少なくないという。

しかし、ここでの作業が最終的なシステムの善し悪しを決める分岐点となる。同社では「ボタンの掛け違いは最後に混乱をもたらす」ことのないよう「調査・分析」を重要なステップと位置付け、顧客との信頼関係を築くことを最優先で実行する、という。トヨタの徹底した現地現物主義である。

トヨタL&Fの付加価値を生む「カイゼン」

そしてもう一つが、運用の部分である。齋須部長は「どんなに完璧なシステムを作り終えたと思っても、実際に運用すれば何らかの不具合は出ることがあります。そこで当社では運用での「改善」のお手伝いを実行しています」と語る。ムダ、ムラ、ムリの排除とともに、いかにもトヨタらしい「改善=カイゼン」の言葉が出てきた。

市場動向に応じて様々に変化する最適な運用を、この「カイゼン」で目差すことで、より全体最適化を図るということだ。「カイゼン」については、日常的なものだけに、「カイゼンが継続できるしくみを織り込みPDCA(計画・実行・評価・改善)で維持する形態をいかに作り上げるかがポイントだ。

同社では品質、労働環境、生産性とのバランスを考えたカイゼン継続の環境作りの提案を行っている。

例えば「ムダ」を見つけるにも、そのムダを見つける目を養わなければならない。それは教育であり、組織風土などにも関わってくる。そしてムダを簡単に判断できるように、表示や道具類の工夫ともなる。物流システム導入による標準作業、平準化、自動化等により、ムダの顕在化も可能となる。これがトヨタL&Fのエンジニアリングによる付加価値となる。

「Infor10」のブランディングで新展開のインフォア

一方、インフォアはグローバルで20年、日本国内で10年以上の実績を持つWMSパッケージメーカー。最近では、WMSの新バージョン「Infor10 SCE (Supply Chain Execution)」を販売開始した。グローバルなWMS市場でトップの「Infor WMS」を提供してきたが、より統合した実行系物流ソリューションとして新たに製品名称も変更してリリースしたものだ。

そして、「Infor10」のブランディングのもと、全インフォアの基幹業務アプリケーションの大規模で統一した製品戦略を打ち出している。同社では、「より顧客の業界に特化した業務ソリューションを提供することで、顧客の要件に対して必要十分な解決をより素早く提供することができるようになった」としている。

詳細な内容は下記URL参照。
http://www.lnews.jp/2011/10/42798.html

最適な運用に必要な総合物流管理システム

両社それぞれに展開してきた物流管理システムだが、長年の実績の上で一つの問題に気付いていた。齋須担当部長は「総合物流管理システム構築の場合、ERP系、WM系、マテハン系、作業系が必要ですが、その多くはERP系とWM系をソフト会社に、そしてマテハン系と作業系をマテハンメーカーに分けて発注しています。これだと、最適な運用は望めません」と話す。

ERPやWMなどの基幹系とマテハンや作業などの作業系の分断はTPS思想からするとムダが多すぎる、ということだ。分断の弊害について一例として、1)トータルピッキングしても、補充する棚が満杯で置ききれず、一次仮置きが発生。→2)適時な補充ができず(補充品目の優先順位不明)にピッキング作業が止まる。→3)補充品一次仮置きで必要な商品を探すことで、作業が止まる。→4)ピッキングする順番を考慮せずにList発行するので、出荷トラックが滞留する――を挙げている。負の循環サイクルとなる。

齋須担当部長は「これは基本設計段階での問題です。基幹系開発担当者が作業系を理解していないために起こるのです」とする。多くの場合、ソフト会社が有償対応することになるが、新たにコストもかかり、生産性は一時的とは言え、著しく落ちることになる。そこで考えられたのが、ソフトもハードも熟知したメーカーが一貫して総合物流管理システムを作り上げることだった。

<総合物流管理システムの重要性:システム構成と開発担当>
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強力なシステム構築パートナーと組む

そこで、トヨタL&Fは自社の商品群を再検討する。同社が対応しているのは、中規模程度のWMSとマテハン系、作業系である。作業系に関しては強い自負があるものの、大型のWMSやERPに関しては全く対応できていない。対策として強力なシステム構築パートナーと組むことが必要だった。

パートナー探しが始まる。その条件はさまざまな機能を有するWMSを持ち、トヨタのエンジニアリングを理解して、変化に対応できる会社だった。評価項目はWMS機能、カスタマイズ性、ERP連携、人材、保守体制など多項目に渡った。さらに、トヨタ流に追従できるスキルを有するエンジニアの有無、顧客優先を追求する組織風土などを重要項目とした。その結果インフォアが多くの項目で最高評価を獲得し、パートナー企業となることになった。

<総合物流管理システムの重要性:体制>
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トヨタの付加価値を強力なパートナーと協業で生み出す

ソフトとハードを併せ持ち、トータルに物流管理システムを構築できることになったメリットは、トヨタの付加価値を提供することでもある。トヨタの付加価値とは「ムダを見つけ、ムダをとる」ことで、カイゼンそのものである。

「ムダを見つける」ことは道具だて、最近はITの活用によるWMSが主流になっている。しかし、単なる在庫管理や作業指示を行うだけではムダを見つけることはできない。ムダを数値化してこそトヨタのエンジニアリング付加価値が生きる。トータルに総合物流管理システムを構築できることで始めて可能となることだ。

ただ、課題はある。最初のボタンの掛け違いを防ぐために、徹底した調査と分析、そして時間とコストをかける前に、顧客からいきなり仕様書を提示され、提案を求められるような時だ。阿曽室長は「当然そのようなケースもあります。トヨタのエンジニアリングの付加価値を説明して理解してもらい、その形で進めていくことは理想です。しかし、顧客の都合もあり、杓子定規に進められないこともあります。我々がどのようなコンセプトで進めようとしているのか、その理想形で進めるとどのようなメリットがあるかなどを顧客に納得していただけるように全力を挙げています。納得を得ないで進めると、方向性が失われてしまい、結果的に顧客の期待に反することになるからです」と話す。

トヨタL&Fとインフォアは提案協業と技術協力を2本の柱に、綿密な情報交換の基に、エンジニアリング付加価値の実現を目差す。両社の協業が生み出す総合物流管理システムの構築は今始まったばかりである。

豊田自動織機トヨタL&Fカンパニー
物流エンジニアリング部エンジニアリング第2室
担当部長 齋須 久佳

物流エンジニアリング部エンジニアリング第1室
室長 阿曽 操

物流エンジニアリング部技術室CS設計G情報WG
ワーキングリーダー 山崎 満

■Infor10 Supply Chain Execution
http://www.infor.jp/product_summary/scm/SC-Execution/

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